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エラール川が地中海に流れ込む地点にビーコンが立つ。グロウ・ド・アグド 
定年後をどうやって暮らそうか、と思案している方々へ

地中海へ

定年後は、海にボートを浮かべて暮らしたい、と夢見る人に時々会う。娘の伴侶もその口。最近会った不動産屋のマネージャーも同じ。定年後は、と時を定めないまでも、漠然とそんな風に暮らしたいと思う人もある。海は広々として、自由を感じさせるからだろうか、風の吹くまま、気の向くままに...と。
​​フランスへボートをもって行こうと決めて以来、シーズンが近づくと、ナンとかカンとか理由をつけて出かけるのを引き延ばして来たものだ。「一人で行くからでしょ?」と言った人がいた。「一人で行くのがつまらないからでしょう」という意味だったのだが、彼はボーケンというものが分かっていない。武者震いという言葉があるが、挑戦の対象を前に全身が緊張で引き締まるのだ。それは意気盛んになると同時に、臆病風が不本意にも吹込んで来る状態でもある。それが又面白いということでもあるのだが、そういうシンドイ事態は、出来れば一日延ばしにしたいのが正直なところだ。が、今年はそういう事が一切無かった。何故か。連れがいたのだ。「それ御覧」と言われそうだが、それは違う。連れがあれば、つまらなくならないからではない。連れがあれば、緊張も意気も臆病風も何もかも首を引っ込めてしまって、まるで日常の延長になってしまうのだ。
 
ちなみに、一人で海の上を走っていて、つまらないと思った事はない。やせ我慢などではない。そんな事を思う暇がないのだ。地図を見ながら、GPSに目をやって、前方の岬は地図のどこに当たるのか、同時に漁師が張った網に引っかからないように目印の竿が水面のどこかに浮かんでいないかどうか目を凝らし、100メートルほど先を行くヨット(速度は速くて6ノット)の角度は私のボート(通常15〜17ノット)の角度とどの辺りで交わるか、場合によっては私の角度を変えるか、はたまた速度を変えるか… 実に様々な事実を照らし合わせ、観察し、計算し、とても忙しいのだ。「へえ、わざわざ海へ多忙を極めに行くのですかね。」等と皮肉なニヤニヤ笑いをしてはいけない。かくなる努力を重ねるが故に、目的が達せられた時は人生が雄々しく思えるのです。

​住めば都 グロウ・デ・アグド(Grau d’Agde)

エラール川沿いの、あと100メートルで地中海といった所に大きなボート・ヤードがある。西海岸一帯で一番の規模を誇り、漁船もレジャー・ボートも手掛けている。そこの主人という人に会って驚いた。華奢で小柄な、とても美しい女人(にょにん)だったのである。しかし化粧気というものは一切無し。その人が控えめに、けれども流暢(りゅうちょう)な英語で説明やら交渉やらに応じてくれた。何といっても私としては、漁師達とも渡り合う荒くれ男とは言わないまでも、船を自在に操る腕っ節の男が出て来ると思っていたのである。ここは家族経営で、両親の後を継いで娘二人が経営に携(たずさ)わり、息子が現場を仕切っている。店で働く人達も、現場で働く人達も、主人に忠実なのは今時珍しいぐらいだ。雇い人の扱いが手厚いのだろう。値段も安い。何しろ安心して任せられる。実はここへ来る前には、とんでもない金額を払わされ、無責任な扱いを受けて途方に暮れ、バンダリズムに遇い、デインギーとデインギー用のアウトボード・エンジンを盗まれ、掛け値なく散々な目に遭って来たのだ。
 
ホテルは2件しかないらしいのに、レストランは川沿いと海沿いの両方にL字型になって並びに並んでいる。そのどれもが美味しい。値段は良心的。人は親切。海は美しい。近隣の住人が食事をしに来たり、都会から家族連れが週末を過ごしに来たりするらしい。居心地が良くて、安心して、つい長居をした。去りがたかったが、しかし、出掛けよう。

フランスの地中海沿岸を西から東へ

Picture
改めて地図を広げてみる。フランスの地中海沿岸は、スペイン国境からアグド(Agde)辺り迄は北に向かって延びている。アグドはローマの植民地として建設された古い街だ。トゥールーズで始まるミデイ運河でアグドへ入ると、地中海に出られる。私もこのルートをとった。さもなければ、イギリスから地中海に入るには、イベリア半島をぐるりと回って来なければならない。それ即ちビスケー湾の脇を突っ切って、しかもジブラルタル海峡を通り抜けて 。そんな事は恐ろしくて出来るものではない。ビスケー湾は気難しい海として、古来人々に恐れられて来た。冬は激しい雷雨が吹き荒び、春から夏にかけては広範な霧に巻かれる。風の向くままは兎も角、気の向くまま等という呑気な航海は期待できない。その上、ジブラルタル。最初の航海の免許はジブラルタルで取ったので、その手強さは身に染みている。訓練の一部として、スペイン沿岸を航海して来てジブラルタルの港に入ろうとしたのだが、どうしても入れない。オマケに夜間の航海だった上にザンザン降りの雨。私達が乗っていたのはババリア社製の10メートルのヨットだったので、大海に浮かぶ木の葉よろしく危う気で、さらにその「木の葉」が60度位に傾いて、いえ、傾きっ放しで、ぐしょ濡れでもタオルが欲しいとか、熱いお茶が飲みたいとかいう御託(ごたく)は一切頭に浮かばなかった。そういう訳で、ゆるゆると、時間をかけて、実は5年がかりで、フランスの内陸を走る運河と河川を乗り継いで辿り着いたのは、アグドの街を流れるエラール川(Le Hèrault)。
 
緩やかに流れる川に運ばれて、やっと地中海に流れ出た一瞬は、「おやっ、」と思う程、呆気なかった。海は明るく波も無く、羅針盤の針が指すのは90度、すなわち東。

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