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南ステラ・マリーナ(Marina Stella del Sud)に付属する、水辺に張り出したレストランからの眺め

定年後をどうやって暮らそうか、と思案している方々へ

冬籠り前後
 
マラテア(Maratea)、チェトラーロ(Cetraro)、アマンテア(Amantea)、
​ヴィボ・マリーナ(Vibo Marina)、ピゾ(Pizzo)

​イタリアでは英語を話す人が少ない。マリーナによっては全然居ない。説教される場合すら再三あった。自分の前に私を座らせて、おもむろに「いいかい、イタリアではイタリア語で話さなくちゃいけない」と諭される。これが一般。「英語でもいいけど、イタリア語で話すなら、なお良い」というのは、かなり譲歩した方。無視されることも少なくない。「ソロ・イタリアーノ!(イタリア語だけ!)」と睨みつけられたこともある。そのくせイタリア語の文法を整理しないまま、一体何世紀経っているのか!おまけに彼らが捲し立てる勢いは、スゴイ。
 
でも周囲を見ると、スーパーの店員さん達、八百屋のご夫婦、ボート用具のお店のご主人、マリーナでボートを並べる隣人達も、「ボンジョールノ」、「ボナセーラ」に万感の親しみを込めて挨拶してくれる...。どうやら言葉の話になると、私は滅入ってしまうらしい。もう10月に入った。帰る潮時かもしれない。でもボートを安心して冬籠りさせられるヴィボ・マリーナ迄、行かなければならない。

​マラテア

サプリから18キロ南下した所にある小さなマリーナ。「見つけにくいが、白いキリスト像が両手を広げて立っているのが目印」と「虎の巻」に書いてあった。小1時間で着けるはず。けれど、いつまで立っても「白いキリスト」が見えない。GPS は行き過ぎてしまったことを示して来る。当然同じ航路を戻って又もや目をこらす。でもキリストは現れない。代わりに防波堤が 現れた。何故か見覚えがある。何のことはない。サプリに戻ってしまったのだ。どーして?といっても始まらない。またゾロ折り返してキリスト探し。「あーあ」とため息をついて思わず空を仰いだ。「えっ?あれ、キリスト?」空に向かって迫り上がる山の天辺に「白いキリスト」が両手を差し伸べて立っていた。私はテッキリ防波堤の脇にでも立って私を導いてくれるのだと思っていたのだ。
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なぞなぞ。「キリストは何処でしょう?」
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キリストは、夜も両手を上げて導いてくれる。ただ、彼を見つけるのは容易ではない。だって空の高みに浮かんでいるのだ。
​​有難いことに、迎えてくれたのも優しげな表情の人。しかも英語で話してくれた。泣きっ面だった私も心が和み、小さい湾に小ぢんまりと佇む家々も優しげ。「停泊料は一晩で50ユーロ」。(おや、安い。サプリでは90ユーロも取られたのに。)「シャワーは無くて、トイレは、あの石塀の下辺り、見えるかな」。(シャワーは自前のがあるからイイや。)しかしトイレは実は公衆で、しかも有料。でも、それなりの広場もあって、カフェやレストランもあって、必需品を買うミニ・スーパーもあって(一軒だけ)、文句は無かった。
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マリーナから町を見上げる。
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町に入る道。イギリス人は、自分達は庭造りに夢中になる人種だと思い込んでいるが、イタリア人だって負けない。彼らは古代ローマの時代から庭造りに精を出してきた。スイス人は、国を挙げて花で町を飾る。色も地方自治体が指定するそうだ。
ところで、こんな小さな町にミシュランのシェフの看板が架かったレストランがあった。マリーナを見下ろすテラスや、手入れをした小さい庭もあって客をもてなす用意もあったが、お客が来るのだろうか。マリーナに高級ヨットの姿は無かったのだけれど。でもまあ、夏には高級ヨットもやって来て、こんな隠れん坊をしているような小さなマリーナにミシュランの店を見つけて、殊更に興趣を感じたりするのかもしれない。
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三つ星ミシュランの例、イタリア

​チェトラーロ

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チェトラーロに向かって直走る。
整ったマリーナだった。規模もある。ゴミ捨て場も見栄え良く作ってある。真ん中に二階建てのオフィスがあって、階下はトイレやシャワー室。洗濯室もあって、何とアイロンまで備えてあった。アイロンを備えてあるマリーナなんて、イギリス、フランス、イタリアも、ここまで来て初めて、お目にかかった。(ボート乗りは、みんなシワクチャのシャツを着ているのだ、バトラー付きのボート以外では。)2階がオフィスで、英語を話す人も一人居た。見晴らしの良いオフィスだった。「こんなオフィスが仕事場だなんて良いわね」。「まあね」。
 

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折角だから洗濯をした。しかしアイロンはかけなかった。
写真電動スクーター。使い方がわからなかった。
​​感心した備品がもう一つあった。電動スクーターを停泊者用に備えてあったのだ。心憎い配慮。実は広いマリーナでは、オフィスに行くにも、トイレに行くにも、外へ出るにも、テクテクテクテク歩かなければならない。自転車やスクーター持参の停泊者も少なくないが、私のボートは小さいので、そんな物を置く場所はない。

​「で、停泊料は一晩30ユーロなんですが」。「えっ!」全てが備わっているのに、あんまり安いのでビックリしたのだ。ところが相手は高くてビックリしたのだと思ったらしく、言い訳がましい。
で、私は本心を白状したか?とんでもない。相手の思い違いに便乗。

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古さを自慢しているようなボート。こういうのは大概アメリカ人かオーストラリア人が持ち主。手入れをするのに時間がかるだろうに。

​

​アマンテア​

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なるほどデイ・ボートばかり。つまり持ち主は地元の人達。
​チェトラーロからヴィボ・マリーナ迄は116キロ。所要時間は7時間と見た方が良い。これは1日の行程としては長過ぎる。交代してくれる相手がいるなら出来ようが。しかし居ない。で、この中間にマリーナが一つあるのだが、設備が思うようではない。立ち寄った人達がガンガン文句を書いていた。「トウーリスト・ポート(porto turistico)の名を冠しているのに、電気も無い!」らしい。「虎の巻」も、「地元のボートで満杯だから、ここに立ち寄ってバースが取れるなんて思ってはいけない」と書いている。当然のように連絡も取れない。但し誰もが書いていたのは、「担当者が親切だった」。私はこれに賭けた。私のボートは小さいし、船底も浅いので融通がきく。もしダメなら7時間一人でやろう、単純な航路なのだ。選択の余地も無いし...。
着いてみると空きはあった。電気もあった。もっとも蛸足のように幾つものコードを差し込める携帯のケーブル・リールだったが、危険が無いならそれで十分。「親切な」担当者が工夫をしてくれたのだろう。停泊料は33ユーロ。

ひっそりとしたマリーナに、真夜中の訪問者があった。アヒルが3羽、スイスイと泳いでいる...。人間の睡眠時間は、7・8時間が理想ということになっている。猫は16時間で馬は2時間だと、心理学のテキストに書いてあった。アヒルは10.8時間だと、『眠りのレシピ』という本に書いてあるらしいのをオンラインで知った。それにしても、真夜中にホッツキ回るなんて、テイーンエイジのアヒルかな?​
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真夜中の訪問者。
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朝まだきで良く見えないが、木造の平家が3棟並んでいる。手前のは教室のようで、ボートクラブ用らしい。真ん中は何だか分からなかった。一番向こうはマリーナのオフィス。
翌朝。問題はトイレ。無いかもしれない。オフィスに向かって歩いて行くと、早出の係員がやって来て、「待って、鍵を持って来るから」。そして鍵をくれて指差した。それはオフィスの裏にあった小屋。でも新しい。ドアを開けると、清潔なトイレに洗面台、トイレットペーパーまであった。サプリでは90ユーロも取って、トイレットペーパーがあったことは無かった。感動した。
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床まで清潔だった。

​

ヴィボ・マリーナ

​港としての歴史は古代ギリシャ時代に始まるらしい。ヒポニウム(Hipponium)と名付けられて一時は栄え、後にローマ帝国の軍港として重用される。しかし現在では、そんな過去を感じさせる名残を見せない静かな漁港だ。ただ港が不釣り合いに大きいし、整備されている。メッシーナ海峡の手前にあって、これだけの規模があるなら大いに利用されて良さそうなものだと不思議に思うのだが。そして停泊料金も格段に安い。だから私もやって来た。
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ヴィボ・マリーナ港。
着いて見れば、水辺に張り出したレストランがオフィスに併設されていて、通路には花が咲き乱れ、植木がぎっしりと並んでいる。バーのカウンターには季節の果物が山盛りになって飾られていて、見事な花が生けてある。これ、第一印象。「コーヒー飲む?」とマリーナの主人。大きく切り取った窓からは、青い海の上にマストが林立するのが見える。ウエット・ルーム(トイレとシャワー)にも大きいカンナの花が置いてある。(はて、花が飾ってあるウエット・ルームなんて、これまであったっけ?)消臭剤まで置いてある!トイレットペーパーがあるのなんか、言わずもがな。掃除も行き届いていた。
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ポントウーンに向かう通路に、花が咲く。水辺にはアヒルやガンが遊んでいた。
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季節の果物。仕入れた翌日のイチゴは、このレストランでは使わない。レモンも、丸ごと手にとって香りがしなければ、もう使わない。これ、料理自慢の心意気。
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イカのバター焼きに、ズッキーニの酢漬けを丸めて添えた昼食の一品。イカは開いて、花弁の形に切ってある。香りが良い。海とバターとレモンの協奏。
​11月から4月までの6ヶ月間の停泊料金は、昨年のプロチダでは€3,100だった。ここは€2,600。10月3日に着いたのだが、10月分もこれに込み。プロチダでは10月の1ヶ月分は€1,435。5月も同額。ここの5月の代金は€350。20キロ先にはトロペア(Tropea)という観光名所もあるのに。

​マリーナに隣接してボートヤードがある。こちらは主人の弟がやっている。兄貴とは違ってニコリともしない。来年の春にはボートを陸に引き上げて、防腐塗料(antihouling paint)を塗り直さなければならない。見積もりを出してもらった。それを見た
連れが「ゼイ アー グット プライス!」と驚いた。面白いのは、塗料もポリシングも労賃も全部€400。まるで「細かい値段なんかに構ってられるか!」と言っているみたい。
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船底に注目あれ。2年間の間に付着した汚れ。これを放っておくと、スピードをかけても思うようにスピードが出ない。
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レオが艶出しを付けて磨いてくれている。
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ニック(ヤードの主)も加わって、「はい、こっち見て!」彼も珍しくニッコリ。
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私も20年間洗った事のなかったフェンダーを洗ってみた。何という違い!
一冬の間、海水に浸かっていたロープがみんな水垢で汚れて緑色になっている。洗おう。しかしマリーナの洗濯機を使ったら怒られるかな?すると主人は大きなバケツを出して来て、埃を払って、その中に石鹸水を作って、私のロープをみんな入れて言った。「日向に出して半日も浸けて置いたら、ロープは日向水の中で風呂に入ったみたいにゆったりして、泥も水垢も落っこちるのサ。後は水で濯ぐ。ロープなんて、そんなもんで良いのサ」。こう説明するのに、彼は自分の手を汚して、30分くらいを費やした。この時だ、私がこの人の人柄を丸ごと信頼するようになったのは。
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トマソ(マリーナの主)とエレナ(マリーナの事務と付属のレストランを運営するトマソの花嫁。)
年が明け、4月になった。ボルボのメカニックが、これまでの2倍にも及ぶ値段で見積もりを出して来た。もっとも前回正式にサービスに出したのは2018年。その翌年は私が足を折り、そしてパンデミックがあり、その上バンダリズムに遭ってボートヤードが内々にサービスをしてくれたので詳細は知らない。7年が経っている。労賃が2割高になっているのは仕方がないのかもしれない。しかしフィルターに、100ユーロ以上も計上している。そこで部品の価格をオンラインでチェックした。結果、半数が市場価格を大幅に上回っていた。要は30パーセントの上乗せ価格で見積もりを出していた事になる。過去20年、機械面は全てメカニック任せにして来たが、今年は私も立ち会おう。
 
メカニックは助手かと思うほどに、まだ若い。でも若いだけに頭の回転も早く、何より手際が良い。腕が良いというのは、機械音痴の私にも分かった。問題のクーラントも、ボルボの製品でなくても構わないのだと明言した。数年後には取り替えた方が良い二つの部品についても、教えてくれた。支払いの段になって、何故かマリーナの主人が、彼と私の双方を自分のオフィスに招いた。彼はメカニックに厳しい調子で詰め寄っている。延々と続く。メカニックも言い返すこと頻り。私は窓に目を移した。マストが林立している。私が愛する景色だ。主人は、私のためにメカニックを問い正しているようだった。もう良いと、目で合図した。そして見積もり通りを支払った。
 
2日後、メカニックが再びやって来て、私にプレゼントをくれた。オイル点検をするデイップ・ステイックのツマミが取れてしまって、私はペンチでつまみ上げていたのだ。「新しいんじゃないけど」と言って、彼はツマミの付いたデイップ・ステイックをくれた。私がどんなに嬉しかったか、お分かりだろうか。高価なものではない。でも、何処にも売っていない物なのだ。数日後、彼がヤードでみんなと一緒に働いているのを見かけた。ボルボの仕事ではないだろうに。 
 
https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.04.0006:entry=hipponion

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マリーナの入り口に掛かる看板。
​ヴィボ・マリーナからメッシーナ海峡を回って、長靴の踵に当たるイオニア海沿いには「マリーナ」と名付けられた地名が幾つもある。例えば、ジノーザ・マリーナ(Ginosa Marina)、カステラネタ・マリーナ(Castellaneta Marina)といった具合に。だからマリーナが沢山あるのかと思ったが、そうではなくて、「海浜にある町」くらいの意味のようだ。フランスの地名によくある「シュル・メール(sur-Mer)」とか「プアジ(Plage)」のような使い方だと理解すべきであるらしい。

マリーナの語源はラテン語で、意味は「オヴ・ザ・シー(of the sea)」。マリーナは女性形で、男性形はマリヌス(mari-nus)。11世紀中葉から15世紀にかけて使われた、いわゆるミドル・イングリッシュでは、マリーナは「海辺(seashore)」を意味した。それならば、ジノーザ・マリーナは「ジノーザの海辺」というわけで、語源に照らしても納得がいく。それが小型のボートが停泊する場所を意味するようになったのは19世紀の後半からのようで、成り行きとしては理解できるが、言葉が一人歩きを始めた感がある。そこで「マリーナ・ステラ・デル・スド・ア・ヴィボ・マリーナ(Marina Stella del Sud a Vibo Marina)」ということになって、頭が混乱して来る。日本語にすれば「ヴィボ・マリーナにある南ステラ・マリーナ」。
​しかし町はスッキリとした造りになっていた。海沿いに5本の道があって、それが町の外れに近づくと合流して2本になって隣の町に繋がっていく。端から端まで歩いても30分あれば十分。地図を見ると、港が町の半分を占めている。私が不釣り合いだと感じた理由だ。古代ローマの時代には、どんな風だったのだろう...古い町が、過去を忘れたように佇む。
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木を切らずに、塀の方を回り道させている。
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しかし、この家は長らく無人らしい。庭が荒れていた。
​マリーナの近くに大き目の八百屋と肉屋があった。スーパーが2軒。*ガストロが1軒。清潔で洒落た造りの魚屋も1軒。清潔は有難いが、洒落ているのは魚屋には似合わない。都合2ヶ月暮らした間に、2回しか行かなかった。何しろ品数も量も無い、魚が無い魚屋なのだ。1回目はイカとカジキマグロしか無かった。2回目はイカと黒鯛だけ。黒鯛とイカは美味しかったが、カジキマグロは「*放っちゃれ」のような味のない代物だった。魚市があるのに、卸売り専門のようで、私は追い出された。「捨てる神あれば、拾う神あり」と母が言ったものだ。その言い草のように、魚市では閉め出されたが、八百屋さんとは仲良くなった。大きな丸茄子、枇杷、そしてイタリアの甘い玉葱が店先に並んだ。肉類も美味しかった。弾力のある鶏肉をミラノ風にフライにし、旨味たっぷりの牛肉は、カラブリア産の赤ワインで丸茄子を入れて煮込んだ。ギリシャの料理だ。これもマニャ・グレチアの名残だろうか。

*ガストロ(gastronomia):ハムやチーズといった加工食品をどっさり並べている店。ハムの塊が天井から吊るしてあったりする。出来合いの惣菜を各種揃えていたりもする。パンも売っているので、「買い食い」ができる便利な店。

*ほっちゃれ:北海道弁で「放ってしまえ」という意味。鮭が川を上って産卵した後は、魚としては味が抜けてしまうので売り物にならない。だから「ほってしまえ」。あるいは、捨て値で捌かれる。転じて、産卵を終えて味の抜けた鮭を「ほっちゃれ」と呼ぶ。
​

                                            (2025年5が5月5月15日脱稿)
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玉ネギやニンジンは普通の大きさ。引き換え、グリーンピースは見事。ハシリだったので、実の方はイマイチの大きさだったが。
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チポラ・ローザを切ると、瑞々しい白肌が現れて、何だかセクシーな感じ。
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八百屋の奥さんとご主人。
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イタリアのチポラ・ローザ・デイ・トロペア(Cipolla Rossa di Tropea)。春の末に出始めて、秋まで店頭を飾る。皆、束で買って行く。名前の通りトロペア特産で、地理的表示(Protected Geographical Indication, PGI)を公的に認められて保護されている。
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ナスが大きいのか?カリフラワーが小さいのか?前者です。

​ピゾ(Pizzo)

​隣町の事を書き添えておこう。ピゾという。鉄道の中継地になっている。歴史的には14世紀からしか記述は残っていないが、恐らくマニャ・グラチアの時代に遡る古い町だと推定される。観光客が集まる。ナポリ王が処刑された城が、町の真ん中にある。小高い丘の上なので、見晴らしが良い。海辺の崖に穿った教会が観光名所の一つ。延々と店やレストランが並んで、名物はアイスクリーム。タルフート(Tartufo。トラフルのこと)と名付けられて、大きいトラフルの形で出てくる。スプーンを入れると中からチョコレートがたらりと流れ出る。何種類もある。カカオの粉をまぶしたもの、ピスタッシオを砕いて散らしたもの等々。コーンやカップに入れて売られる普通のアイスクリームは2・3ユーロだが、これは7・8ユーロ。それにしても何でこんなに人が集まるのだろう?でも楽しそうにアイスクリームを食べている人々の中で、私も楽しい気分になる。ホテルも広場にあるホテルに部屋をとった。ボートの整備につき合った後の、これは私の休暇。
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右端に見える道を降りて行くと駅がある。徒歩で行けば30分?トクトク(バンコックにある様な三輪車)でなら5分。
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​城の門前で写真を撮る人はあるが、中に入る人はいない。私は入ったが、城からなら広場のチョット変わった造りがよく見えると思ったからだ。ついでに、と言ってはなんだが、展示も見た。概ね実物大のナポリ王を含めた兵士達の監禁状態を示したもので、生々しい。これでは入館する人がいなくても不思議ではない。
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広場は、こんな薄いコンクリートの上に載っている。山だったのを平らにしたのか、まさかコンクリートで台を造ったわけでもないだろうに。
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広場に立つと、普通の見晴し台に見える。地面が薄っぺらなのは見えないから、心配にもならない。
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町角の噴水。
​サンダルが欲しいと思ったので、並びに並んだ店の一軒に入った。どれもこれも200ユーロ前後。すると店員さんがやって来て「これ手作りなんですよ。それに良い皮でしょ?」「予算は幾ら?」「20ユーロ」。さっさと出て来た、呆れて言葉を失った店員さんを後にして。オステイアのマリーナでは、どの店でも20ユーロくらいで売っていたのだ。アレでたくさん。
 
ランチにスパゲテイーでも食べようか?しかし、あいにく今日は不味いものしか無い場合に備えて、ガストロでハムとサラダとパンを買って来ている。レストランに入るのは夕食時にしよう。
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洞窟教会の出入り口。
​​海辺の洞窟教会を見に行ったが、ランチタイムで鍵が掛かっていた。こちらも、実物大の修道士達があちこちに立っているのを復元していた。鉄格子で囲ってあるだけなので、内部は丸見え。覗いただけで済ませた。
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正面奥に、キリストを膝に置いたマリア像が祀ってある。
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教会内のあちこちに等身大の石像が立つ。
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お子様用に誰かが造ってくれたような小さな湾。海底も砂なので、子供も安心して入っていける。
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小さな湾が並ぶ、珍しい海岸。どうしたら、こんな地形になるのだろう。
​せっかく休暇にやって来たのに、埃だらけの稚拙な人形やら石像やらを見せられて、少々くたびれて広場のベンチに座った。すると、なんと、私の目の前で、素晴らしい「ショウ」が始まった。次々にクラシック・カーが到着して並び始めたのです、はい。そこで私を含めた観光客は、無料で、思う存分、眺めたり、品定めをしたり、写真を撮ったり、大いに満喫した次第。持ち主達は海を見下ろすカフェに集まって、コーヒーでも飲みながら、親交を結んでいるらしい。時々こんな風に集まるのだろう、イギリスでもやっている。マア、お金と暇のある中年男が、「おもちゃ」を見せびらかしに集まったようなものだ。でも私たち観光客は、予期せぬ目の保養をさせてもらって大喜び。
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後方にはクラシックカー。手前には最新車。「どっちが良いかな」等と、手の届かない高級車を見比べて思案する事しきり。
写真ホテルの窓から、ゴッタ返す通りを見下ろす。
​そろそろ4時。アプリテイーボの時間。ホテルに戻って着替えをして出て来たが、カフェは今だにアイスクリームの客でいっぱい。アプリテイーボは何処にある?ボーイさんの一人が「ある、ある。僕連れて行ってあげる」と引っ張って行ったのは、他の店より心持ち慎ましい構え。アプリテイーボを出しているのは、広場の端に構えたこの店と、カラブリア産ワインの直営店の2軒だけだと知った。でもこの慎ましい店は、パッション・フルーツ入りのスプリッツを出してくれた。ほのかな酸味のあるスプリッツは、なかなか美味しかった。

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通りの真ん中に座らされて「落ち着かない!」とか、こんな所にテーブルを持ち出して「邪魔だな!」とか文句を言う人はいないようだ。
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写真の後方、建物の狭間に通りがあるのが見える。これが店やレストランが並ぶ、ピゾの目抜き通り。
​さあ、夕食。一番美味しい店で食べよう、とばかりに目をつけておいた一軒に着いてみると、ウエイターが5・6人並んでニコヤカに迎えてくれた。但し、「8時から給仕を始めるので、後2時間お待ちいただかなければなりません。今はアイスクリームの時間帯なので」という返事。アイスクリームなんて10分で食べてしまえるのに、ここに座っている人達は午後いっぱいアイスクリームの前に座っておしゃべりをして、更に後2時間座っているのが分かってホテルに戻った。夕食?ランチの残りと水。
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客が去って、掃き清められて、無音に佇む夜明け前の通り。
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入り口を飾る造りがギリシャ風に見えて立ち止まったのだが...。
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朽ちるままに放置された建物も、手入れをされた家も、共に並んで海を見下ろす。
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ピゾ港の彼方に、ビボ・マリーナを臨む。
当てが外れたような事が多々あった様な「休暇」だったのに、気分が晴れている。やっぱり「休暇」に来て良かった。距離が必要だったのだ。メカニックが水増し請求をしたのが応えていた。オステイアでも呆れる程の高額を払った。オステイアでさえ、ボルボのメカニックは実質一人しかいなかったから、選択の余地は無かった。ここでも同様。ボルボのエンジンは良いが、それを整備できるメカニックは少ないらしい。だから彼らは傲慢になり、欲をかき、高額を取る...。又そう言う請求書を見もせずに支払う金持ちが集まるのが、イタリアだ。

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